1.医療機関の人事制度の特徴
医療機関では、年功主義の人事制度が多いのが特徴です。
年功主義は「勤続年数」、「学歴」などを評価しますが、勤続年数が長い職員が必ずしも仕事ができるわけではありません。
年功主義は、昭和40年から50年頃まで、工場などのブルーカラーの方を対象に生まれた制度です。
工場の工員は、熟練技術が評価され、勤続年数が長い方を評価することに合理性がありますが、
医療機関の職員にこれを適用するのは、少し違うのではないかと感じます。
年功主義は、いくら努力しても、勤続年数の長い方より賃金が上がらないため、職員のモチベーションダウンにつながる可能性も指摘されています。
2.能力主義への移行
このような理由から、能力主義の人事制度を取り入れる医療機関や福祉施設が増えています。
能力主義は、職能(職務遂行能力の略)を評価する制度です。
それぞれの等級ごとに、医療機関が求める「知識」「技術」「図書や通信教育・研修」「習得能力」「習熟度」などを定め、要件をクリアすれば、次の等級に進むことができます。
これを「職能要件書」にまとめ、等級化することで、実際の賃金などの処遇にも当てはめていきます。
更に、40歳以上の職員には、実力・成果主義を導入している医療機関があります。
これは、能力主義で等級が高い職員であっても、年齢とともに気力、体力、環境適応能力などが落ち、等級に見合う賃金を払うことが難しくなることに起因しています。
実力・成果主義では、今使える力で評価をしていくことになります。
40歳までは能力等級による賃金体系とし、40歳以降は実力・成果によるアップダウンのある賃金制度を組む病院は、能力主義+実力・成果主義の人事制度であり、かなり進んだ考え方であるといえます。
3.医療機関・施設における人事制度の意味
医療機関・施設において、何のために人事制度・賃金制度を作るのか、その目的によって、どのような制度を導入するかが決まります。
人事制度は、本来、医療機関、施設のビジョンを実現するために構築するものです。
医療機関には達成すべき明確なゴールがあり、その実現のために、必要な人材像があります。
その人材像に至るまでのロードマップが、人事制度、賃金制度であるべきです。
このため、人事制度は、職員の能力をボトムアップする育成制度であるべきだと考えます。
年功主義の人事制度は、医療機関のビジョンを達成するためには不向きであることがお分かりになると思います。
4.ビジョン実現のための人事制度
求める人材像についての基準を明示することから始まります。
能力主義の「職能要件書」で、等級ごとに求める能力、知識、必要な教育、習得能力、習熟能力などを明確にします。
その階段を一つずつ駆け上がっていくことで、医療機関・施設のコア人材となるように育成していくのです。
5.考課のしくみ
病院・施設が期待する職能・人材像・期待像を明らかにした後は、各職員について評価をしていきます。
これには、本人との面談が欠かせません。
職能要件書の等級の中で「できていること・できていないこと」を本人と話し合い、評価期間内で「できていないこと」を目標として定め、半年・1年の内にできるようにチャレンジさせます。
できるようになれば評価し、努力が足りずできなければ評価しないという形で、処遇面(賞与や昇給)に反映していきます。
等級の要件をすべてクリアできれば、次の等級に昇格するという仕組みです。
医療機関・福祉施設における人事制度・賃金制度の概略をご説明しましたが、幣事務所では、医療機関・福祉施設における能力主義・実力成果主義の人事制度、賃金制度の構築業務を行っております。
年功主義から脱却し、医療機関・福祉施設のビジョン達成のための人材育成をお考えの病院・福祉施設様におかれましては、ぜひご相談くだされば幸いです。