福祉施設における労務問題の特徴は、次のとおりです。どの施設も同じような問題を抱えているケースが多いように思います。

【労働時間・勤怠管理】

 休憩時間が取れない、残業ばかりといった声が多いのが特徴です。理由としては、業務自体が多いことの他に、利用者を前にすると放っておけないので、休憩時間を減らしたり、サービス残業をしてでも対応しようとする真面目な職員さんが多いことがあります。ただ、それを放置して良いわけはありません。単に法律違反だからというのではなく、現場を混乱させないよう配慮しながら改善していくことが大事です。

 また、勤務の管理自体ができていない施設もあります。職員が出勤しているか、休んでいるか程度の把握しかしておらず、遅刻しても注意せず、制裁をしない職場が比較的多いです。真面目に働いている人のモチベーションが低下する要因になっており、優秀な職員が離職する原因になります。したがって、就業規則や職場のルールを守らせるという基本的なことや職場の規律改善が課題です。

【メンタルヘルス問題】

 うつ病などのメンタルな問題は福祉施設においても大きな悩みです。

【職員の確保・離職防止】

 老健や特養など福祉施設でも、介護職員や看護師などの職種の確保は難しい現状があります。そのため、働きやすい職場作りや給与制度を見直したりして離職の防止を図ることが課題です。

【キャリアパス設計】

 福祉施設に勤める介護職員には、2009年10月より「介護職員処遇改善交付金」が2年6カ月の期限付きで支給されています。2010年10月からは、キャリアパスのしくみを各施設に取り入れることが支給条件に求められました。しかし、実際の職場で活用するのは難しいという施設の声も聞きます。

 キャリアパスを取り入れることは単に交付金を満額受給するということではなく、各施設では、どのようにすれば介護職員の育成が図れるのか、または離職の防止につながるのかという視点で対策を検討する必要があります。

【人事評価】

 福祉施設では、人事評価(人事考課)を職員が期待していることが考えられます。

 福祉施設では評価結果の違いで給与に大きな差をつけられる職場ではありません。チームで仕事をしたり、結果と個人の成果とが直接的に結び付かないためですが、「自分の頑張りを認めてほしい」「課題として取り組むことを教えてほしい」と考えている職員が多くいます。そのような視点で人事評価制度を構築し、職員と向き合う機会を作ることが大切だと考えていますが、実際はあまり手をつけられていない施設が多いと思います。

【教育研修体系】

 教育研修の体系が十分整備されていない施設が多いと思われます。業務にそのまま結び付くことや、法律で定められたものは研修をされていますが、職員個々のレベルに合ったものではありません。研修内容が固定的でその範囲が狭く、偏りが見られることが多いため、中長期にわたり人材育成をするためのバランスのとれた研修メニューを整備することが必要です。

 職員の離職を防止し、定着を図るためにはキャリアパス、人事評価制度と連携の取れた教育研修体系が必要です。

【中途採用者の初期教育】

 昨今の景気低迷の中、他業種から福祉の職場に転換してくる方が多くいますが、これらの方には入職時の初期教育が重要だと考えます。なぜなら、転換してくる方の中には、福祉という言葉だけに惹かれ、自分も社会のために貢献したいという気持ちを持っている方は多いのですが、福祉の仕事には3Kがつきもので、また利用者のために自分のことを差し置いても対応しなければならないことが多く、働く前のイメージと現実とにギャップを感じ、戸惑う方がいるからです。まずは現場の実態を理解させ、受け入れてもらわなければ定着は難しくなります。

 福祉施設特有の労務問題を改善するための対策について考えています。 

 【管理職やリーダー研修、指導】

 福祉施設においては、専門能力が高い職員や、経験年数が長い職員が管理職に就く傾向がありますので、管理職のマネジメント能力が十分でないケースが多いようです。このため、財務や人事、労務、関係法令、組織統率などの幅広い知識を理解するための管理職研修が必要です。また、主任クラスの育成も大切です。職場をまとめているのは主任クラスであれば、主任次第で職場の雰囲気が変わります。成長を促すために、職場で必要な考え方や行動を集中的に訓練させることで、成長しますので、職場の雰囲気が良くなります。

【業務改善】

 福祉施設では、慣習的な考え方から抜け出せていないことがあります。例えば、仕事のやり方が非効率であっても、疑いなく同じことを繰り返し、改善しようとしないといったことが考えられます。業務改善の知恵を学ぶ機会がなかったり、指導者がいないことが原因の一つですが、改善すべきこと一つ一つを取り上げて、改善に結びつければ、とても大きな成果となり、職員の力を伸ばすこともできます。

【情報の共有化】

 福祉施設内又は施設間で連携がうまくとれておらず、情報の共有ができていないケースがあります。施設内の報告・連絡・相談やPDCAサイクル(plan do check action)を回すといった基本的なことができるように指導することが必要です。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
月~金(祝日休 9:00~18:00)

ご不明点などございましたら、お電話もしくはお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

092-834-4996

福岡市早良区高取の社会保険労務士事務所です。福岡市および福岡県内全域を中心に社労士として活動しています。人事労務コンサルタントとして、企業や医療施設、病院、クリニック、福祉施設の人事制度、賃金制度の提案、就業規則作成や 給与計算のアウトソーシング、人事労務のサービスを通じて、福岡の会社の課題を経営者のみなさまと一緒に乗り越えていきます。

業務対応エリア
福岡県福岡市、大野城市、筑紫野市、春日市、糟屋郡、その他県内全域。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ

092-834-4996

<受付時間>
月~金(祝日休 9:00~18:00)

大平社会保険労務士事務所

住所

〒814-0011
福岡県福岡市早良区高取2丁目
16-24-2F

受付時間

月~金(祝日休 
9:00~18:00)