1.職員に自律的に動いてもらうには

「指示されたことはしっかりやるが、自分で考えて動こうとしない職員が多い」というお話しを伺うことがあります。

 

立ち止まって考えてみると、

・職員さんが勝手にやって良いのか分からず、委縮している

・院長や師長などが細かく口を出しすぎている

 

もしかしたら、思い当たることがあるのではないでしょうか。

 

「このことについては、私は何も言わないので、考えてやってみなさい」と、職員さんに権限と責任を付与すると自律的に動いてもらえることが多いようです。

 

例えば、何かの委員会を立ち上げ、権限と費用を与えて取り組ませることで、適度な自律性を備えた職員さんに育ったという成功例もあります。

 

 

2.職員の派閥をなくすには

職員数名の小規模クリニックでも、仲の良い職員のグループができ、対立するような状態になっていることがあります。

 

なぜ少人数でもこのような状態になるのでしょうか。

 

原因のひとつとして、「他人のことを話す」ことで誤解が生まれ、関係が悪化するということがあるようです。

 

他人のことを話すのが好きな人が多い職場ほど、このような傾向があるのではないでしょうか。

 

「他の職員の話をしてはいけません」というのは無理なので、人の話ではなく、別の話をするような取り組みをクリニックで行うことをおすすめしたいと思います。

 

一般的に人は、「自分が好きなこと」、「夢中になっていること」の話をしたいと思いますので、職員さんに何か趣味を持ってもらうような取り組みをクリニックで行うこともひとつです。

 

例えば、クリニックで趣味を持つことを奨励し、少額の趣味費用を補助するなどの取り組みは、長期的には院内の派閥解消に役立つのではないでしょうか。

 

 

3.責任の所在を明確に

患者さんから、「スリッパが汚いよ」という指摘を受けた場合、特に誰の責任でもなく、クリニックの責任として受け止められてしまえば、そのまま忘れ去られてしまうでしょう。

 

患者さんが当院のために言ってくれたこの一言は、しっかり受け止め、改善に活かされるべきです。

 

ショッピングセンターや飲食店のトイレを見てみると、何時誰が掃除を担当したのか、一目でわかるようになっています。これは例ですが、責任の所在を明確にすることが、職員の自主性を育てることになります。

 

名札の名前を裏返したり、見えにくくしている方など稀に見られますが、名前をはっきりと大きな字で分かるように表記することも、責任を自覚してもらう上では大切なことといえるでしょう。

 

 

4.職員の家族に診察を受けてもらう

職員の家族が多く受診する医療機関は、勤務先に対して誇りを持っている職員さんが多いと思います。

 

職員の家族がほとんど受診しない医療機関は、まずは家族が来てくれるような工夫をしてみるのも良いと思います。

家族が受診することで、勤務先に誇りが持てるということもあるからです。

 

例えば、家族は2ポイント、友人や知人は1ポイントといった形でポイント化して、スタンプカードを作り、ポイントがたまれば、家族や友人と一緒に楽しめるようなものをプレゼントするといった取り組みも面白いと思います。

 

 

5.電話を減らす工夫

受付の方は、患者の窓口対応が多いときに、たくさんの電話がかかってくることでイライラすることがあると思います。

電話の中で、「今待ち時間はどれくらいですか」というものを無くすだけでも、少なからず電話は減るのではないでしょうか。

 

最近では、ホームページで今の待ち時間を案内している医療機関があります。このサービスによって、患者の電話が減り、その時間を患者に向けられるようになったというお話しを聞くことがあります。

 

1か月間の予約状況を30分刻みで、「余裕あり」・「混雑」といった形で確認できるシステムもあるようです。

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看護師さんをはじめ、職員を確保するのは大変な状況です。

 

医療機関の通勤圏内にどれだけの看護師さんが住んでいるかを考えても、そのパイは限られていますので、募集してもなかなか応募が少ないのも当然のことかもしれません。

 

それならば、職員さんが定着する職場作りという発想はどうでしょうか。

看護師さんの平均勤続年数は3年程度と言われますが、中には5年から10年という医療機関もあります。

 

このような医療機関に共通しているのは、「安心して働ける職場である」ということです。

 

これには、「マズローの欲求5段階説」がヒントになります。

 

① 生理的欲求  生きていくための食欲・性欲・睡眠欲など、人間の本能的・根源的な欲求

② 安全の欲求  危険から身を守り、安定・安全な状態を得ようとする欲求

③ 集団の欲求  集団や社会に属して、誰かに愛されたいという欲求

④ 承認の欲求  自分が集団から価値があると承認されたい欲求

⑤ 自己実現の欲求  自分の潜在的な可能性の探求や自己成長を図ろうとする欲求

 

①が一番下位の欲求で、⑤が一番上位の欲求です。

下位の欲求が満たされば、上位の欲求を求めるようになります。

 

例えば、休日が少ない、残業が多い、有給休暇が全く取れないという状態で、皆疲れきっている職場では、生理的欲求が満たされていない状態です。

 

このような職場で、表彰制度を導入して承認の欲求を満たそうとしても、効果がないことが分かります。

 

まずは、生理的欲求を満たすことから始め、徐々に上位の欲求を満たす必要があります。

 

多くの医療機関では、この順番が間違っていることがあり、折角職員さんのためにした取り組みも、効果が得られないという状況があります。

これは、とても残念なことだと思います。

 

あそこは賃金が安いが、人手不足にならないのはなぜだろう?

と思われる医療機関はないでしょうか。

 

おそらく、賃金は地域で一番低いけれど、休みがしっかり取れ、職場の雰囲気が良く、それぞれが相手を尊重しているような職場ではないでしょうか。

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医療機関の職員さん・・・特に看護師さんと、一般企業の社員では、ひとつ大きな違いがあります。

 

それは、看護師さんの大半は、一番最初に大きな病院で勤務しているということです。

 

いわば、大きな病院での処遇が、普通だと思ってしまうというところがあると思います。

 

誰しも、社会人になって最初に就職した職場は、強く心に残っているものです。

 

しかしながら、大きな病院と個人クリニックでは、資本が全く違うこともあり、同じような処遇ができないのは当然だと思います。

 

同じような処遇にする必要はむしろなく、大切なのは、

分かりやすい仕組みをつくり、不安を与えない管理をする

 

ということではないでしょうか。

 

職員さんは処遇が違うのは当たり前と思っていても、分かりにくいことや、説明をしてもらえないことに不安を抱いているものです。

 

そのためには、節目ごとに、一例ですが次のような対応が求められます。

 

応募時 労働条件を具体的に書き、教育体制の説明もしっかり書く

 

面接時 面接には師長などの現場トップも参加し、業務内容を具体的に説明する。

       将来のキャリアについて本人がイメージできるまで説明する。

 

採用時 入職ガイダンスをしっかり行い、賃金はどうすれば上がるのかについても曖昧にせず説明する。

 

勤務時 有給休暇の日数がしっかり把握できる。

      採用後はほったらかしにするのではなく、定期的に勤務状況や業務習得について先輩からのフォロ

      ーをする。

      賞与についても、支給されるまで分からないという状態ではなく、決定基準について面談して説明す

      る。

 

育児休業 育児休業には難色を示さない。

 

退職時 退職ガイダンスをしっかりする。

 

有給休暇はかなり浸透し、今となっては皆さん知っているので、隠そうとしても仕方ない部分があります。

有給休暇は取得されるものと思って、労務管理をしていくことが大切になってきています。

 

また、賃金については、職員は給与明細を見せ合うものと思い、具体的で説明がしやすい制度にする必要があります。

 

このような医療機関ならではのポイントを抑えることで、不安や不信感を抱く職員さんは減り、人事トラブルが起こる可能性は低くなります。

更に職員さんの定着にもつながることが良く分かると思います。

 

まずはできることから始めても、大きな成果が実感できることでしょう。

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特にクリニックなど小規模な医療機関では、スタッフの欠員などで、即戦力の職員が求められるケースが多いです。

しかし面接時に、どの程度の業務ができるのか、本人に尋ねるだけでは、なかなか判断できません。

 

特に看護師さんは、給食調理の方のように、実際に実技をしてもらうわけにもいきませんので、難しいところだと思います。

 

対応できる業務内容は、可能な限り確認するために、例えば業務の一覧表を作り、「よく対応していた」「対応したことはある」「対応したことがない」のいずれかに丸をつけてもらうようにすることで、その方の実務能力の把握をすることがあります。

 

看護師さんであれば、「動脈ラインからの採血」「CT・MRI検査」など、当院で基本的に行う実務についての表を作成し、記入してもらうことで、ある程度の実務経験が確認できます。

 

どの程度まで業務ができるかの確認作業は、お互いのミスマッチを防止するためにも必要なことといえるでしょう。

 

 

採用後は、試用期間を有効に使うことも大切です。

 

試用期間専用の雇用契約書を作成し、当院の職員として求める技能や接遇について、具体的に提示し、クリアできている場合に本採用することをしっかり説明しておくことが大切です。

場合によっては、試用期間専用の評価シートを作り、本採用までにマスターすべきことをしっかりと示してあげれば、更に効果的です。

 

このような手続きをしっかりと行っていれば、著しい能力不足の場合や、やる気が全くみられない場合に、本採用できないという説明を行うことができます。

 

長く勤めてもらう職員さんなので、採用時、試用期間の間にミスマッチを防ぐ取り組みをすることは、医療機関、職員さん本人にとっても大切なことなのです。

 

幣事務所では、業務の一覧表、試用期間専用の雇用契約書、試用期間専用の評価シート作りのお手伝いをしています。

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先生方から、特に若い職員さんのお話しを伺う中で、次のような共通の特徴があるように思います。

 

・会話で表現することが苦手で、後からメールで伝えてくることが多い

・我慢が苦手で、思い通りにならないことに対して拗ねたり、感情的になることがある

・自分の都合の良いように解釈するため、後でもめることがある

・人の好き・嫌いが激しく、苦手な人を過度に避ける傾向がある

 

これらは、すべてコミュニケーション能力の稚拙さに起因することですが、親や学校から注意を受けたり、自分の意見を話す機会に恵まれなかった、若い職員さんに多いように感じます。

 

院長や先輩から注意・指導を受けると、親から苦情が来たり、本人がうつ病に罹患したりするケースがあり、注意指導もままならない状況もみられます。

 

医療機関の対応として、彼らが得意な方法でコミュニケーションをとってもらいながら、徐々に改善策を講じるという二本立てで考えることで、徐々に変わってもらう方法をおすすめしたいと思います。

 

彼らが得意なこととしては、たとえば

・マニュアルに従って業務をこなしていくこと

・携帯電話でメール報告すること

 

があります。

 

若手職員と一緒になって業務マニュアルを作ることで、院長や先輩職員とのコミュニケーションを図ります。

また、出来上がったマニュアルに沿って、丁寧に指導してあげることは、根気がいりますが、会話をする訓練としても効果があるようです。

 

また、日報や週間報告書の提出を携帯メールで行ってもらい、徐々に紙や会話でも報告できるように育てるといった工夫すると、良い成果につながるのではないでしょうか。

 

徐々に改善してもらう方策としては、例えば

・何でもよいので、3分間話してもらう

 

という形で、和やかな雰囲気でスピーチをしてもらう機会を作る方法が考えられます。

 

旅行や趣味の話を聞いた院長や先輩職員も、後でそのことについてもっと尋ねてあげると、本人とのコミュニケーションづくりの良いきっかけになるでしょう。

 

彼らが苦手だと思っている人は、普段ほとんど話さない人がほとんどです。

会話のきっかけを作るこのような取り組みは、特に若い職員さんを戦力化するために良い方法のひとつです。

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医療機関や福祉施設は、働く方にとって、精神的ストレスの溜まりやすい職場のひとつです。

 

患者さんや利用者の方は、みな具合が悪く、不自由な思いをされており、そのような方を相手に仕事をしているため当然のことかもしれません。

 

ストレスが発散されずに溜まっていくと、患者や利用者に矛先が向けられ、時として虐待などに発展することは、ニュースや新聞を見ても分かります。

 

このような問題行動の背景のひとつとして、職場のストレスが考えられます。

ストレスを解消する工夫も、医療機関や福祉施設では大切になってくるでしょう。

 

ストレスを発散するための取り組みとしては、たとえば

勤務体制を柔軟でゆとりあるものにする

・同僚間で褒めあい、助け合う行動を高く評価する

 

といったことが考えられます。

 

勤務体制を柔軟でゆとりあるものにするとは、例えば

・勤務シフトのメニューに短時間のものを加え、変形労働時間をうまく使う

・有給休暇を計画的に設定し、連休をとることを義務化する

・報告書を減らし、又は報告の仕方を軽減する

 

などが考えられます。

 

深夜勤務の後、日勤をするような状態が続き、常に患者さんや利用者さんに付きっきりの状態では、ストレスが溜まるのも仕方がないように思います。

 

リフレッシュしてもらうために、連休を取る他、医療機関からスーパー銭湯のチケットや映画のチケットを配布するのも良いかもしれません。

 

同僚間で褒め合い、助け合う行動を高く評価することについては、

・当院・当施設の人材像を明確にする

・人材像の見本となるような方は、賞与や昇給のタイミングでもプラスの査定をすることを明らかにして説明し

 ておく

 

ことなどが考えられます。

 

医療機関や福祉施設の中には、クレドを作って、関わる全ての方たちに対する行動基準を定め、スタッフ全員で共有しているところもあり、職場の雰囲気作りにも役立っているケースがあります。

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医療機関・福祉施設においては、特に次の3つのことが重要になります。

しかし、この3つを十分にできている医療機関・施設はごく少数です。

 

次の3つをしっかりと押さえれば、人事労務のトラブルはそうそう起こるものではありません。

ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

 

1.採用時と採用直後の管理を徹底する

採用面接においては、マイナスとして考えられる部分についてもしっかりと伝えることが大切です。

マイナスの部分を聞いても、就職して頑張りたいという方を職員として迎えるべきでしょう。

 

お互いに納得したところで、就職が決まります。

そして、就職した後も大切な期間です。

 

試用期間を必ず設けること」、「試用期間を有効に使うこと」が求められます。

 

試用期間では、試用期間専用の雇用契約書を結び、「本採用になるための基準」を明確に示すことが大切です。

この基準を満たさない場合は、試用期間満了とともに退職していただくことをはっきりと伝えることです。

 

最初から問題職員を採用しないことが一番ですが、それは不可能な部分があります。

 

それならば、採用時・採用直後にこのような取り組みを行うことで、問題職員を正式雇用しない管理を徹底することが、医療機関・施設ができることなのです。

 

2.就業規則や規程を整備する

医療機関・施設では、かなり昔に作った就業規則がそのままになっていたり、労働基準監督署のモデル就業規則をそのまま使っているケースがあります。

 

中には、どこかの業者さんが持ってきたものもあり、いざトラブルが起こったとき、全く使い物にならないことがあります。

 

就業規則には、職員が守るべきことを具体的に記載し、そのことを職員さんが知っているという状態にすることが不可欠です。

そして、そのような行為は、懲戒事由に該当することを示すことが、労務管理には必要になります。

 

就業規則は、問題行動があったときの対処だけではなく、問題行動を未然に防ぐ抑止力としての機能も持ちます。

 

医療機関専用の就業規則であり、かつリスク管理型の就業規則を作成できる、専門の社会保険労務士と一緒に作成することをぜひおすすめしたいと思います。

 

3.管理者の教育

たとえば、好きな職員・嫌いな職員によって対応が違うようでは、管理者として失格です。

 

職業倫理や仕事に対する姿勢を、部下に均等に、正しく伝える能力が求められます。

 

また、問題職員がいる場合、その問題行動をすべて記録することは、管理者としてすべき重要な役割りです。

万一解雇のトラブルになった場合には、そのような記録が医療機関に有利に働くことがあるからです。

 

管理者教育としては、部下の指導方法や労働基準法の理解など、すべきことはたくさんあります。

 

幣事務所では、医療機関・施設がすべきことの提案を行っています。

労務管理の見直しのためにも、ぜひご相談くだされば幸いです。

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1.医療機関の人事制度の特徴

 

医療機関では、年功主義の人事制度が多いのが特徴です。

年功主義は「勤続年数」、「学歴」などを評価しますが、勤続年数が長い職員が必ずしも仕事ができるわけではありません。

 

年功主義は、昭和40年から50年頃まで、工場などのブルーカラーの方を対象に生まれた制度です。

工場の工員は、熟練技術が評価され、勤続年数が長い方を評価することに合理性がありますが、

医療機関の職員にこれを適用するのは、少し違うのではないかと感じます。

 

年功主義は、いくら努力しても、勤続年数の長い方より賃金が上がらないため、職員のモチベーションダウンにつながる可能性も指摘されています。

 

 

2.能力主義への移行

 

このような理由から、能力主義の人事制度を取り入れる医療機関や福祉施設が増えています。

能力主義は、職能(職務遂行能力の略)を評価する制度です。

 

それぞれの等級ごとに、医療機関が求める「知識」「技術」「図書や通信教育・研修」「習得能力」「習熟度」などを定め、要件をクリアすれば、次の等級に進むことができます。

 

これを「職能要件書」にまとめ、等級化することで、実際の賃金などの処遇にも当てはめていきます。

 

更に、40歳以上の職員には、実力・成果主義を導入している医療機関があります。

 

これは、能力主義で等級が高い職員であっても、年齢とともに気力、体力、環境適応能力などが落ち、等級に見合う賃金を払うことが難しくなることに起因しています。

 

実力・成果主義では、今使える力で評価をしていくことになります。

 

40歳までは能力等級による賃金体系とし、40歳以降は実力・成果によるアップダウンのある賃金制度を組む病院は、能力主義+実力・成果主義の人事制度であり、かなり進んだ考え方であるといえます。

 

 

3.医療機関・施設における人事制度の意味

 

医療機関・施設において、何のために人事制度・賃金制度を作るのか、その目的によって、どのような制度を導入するかが決まります。

 

人事制度は、本来、医療機関、施設のビジョンを実現するために構築するものです。

 

医療機関には達成すべき明確なゴールがあり、その実現のために、必要な人材像があります。

その人材像に至るまでのロードマップが、人事制度、賃金制度であるべきです。

 

このため、人事制度は、職員の能力をボトムアップする育成制度であるべきだと考えます。

 

年功主義の人事制度は、医療機関のビジョンを達成するためには不向きであることがお分かりになると思います。

 

 

4.ビジョン実現のための人事制度

 

求める人材像についての基準を明示することから始まります。

 

能力主義の「職能要件書」で、等級ごとに求める能力、知識、必要な教育、習得能力、習熟能力などを明確にします。

 

その階段を一つずつ駆け上がっていくことで、医療機関・施設のコア人材となるように育成していくのです。

 

 

5.考課のしくみ

 

病院・施設が期待する職能・人材像・期待像を明らかにした後は、各職員について評価をしていきます。

 

これには、本人との面談が欠かせません。

 

職能要件書の等級の中で「できていること・できていないこと」を本人と話し合い、評価期間内で「できていないこと」を目標として定め、半年・1年の内にできるようにチャレンジさせます。

 

できるようになれば評価し、努力が足りずできなければ評価しないという形で、処遇面(賞与や昇給)に反映していきます。

 

等級の要件をすべてクリアできれば、次の等級に昇格するという仕組みです。

 

 

医療機関・福祉施設における人事制度・賃金制度の概略をご説明しましたが、幣事務所では、医療機関・福祉施設における能力主義・実力成果主義の人事制度、賃金制度の構築業務を行っております。

 

年功主義から脱却し、医療機関・福祉施設のビジョン達成のための人材育成をお考えの病院・福祉施設様におかれましては、ぜひご相談くだされば幸いです。 

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医療機関・福祉施設における人事労務は、一般企業と異なるといわれており、それは規程や書式等においても同様です。

例えば、薬剤や被服の管理、患者等の情報管理など、医療機関・福祉施設ならではの管理を考える必要があります。

当事務所では、医療機関・福祉施設の人事労務管理に特化した以下の規則、規程、書式等を合計100種類以上取り揃えており、医療機関・福祉施設においてもすぐに活用いただくことができます。

当事務所の顧問先医療機関・福祉施設におかれましては、このような規則・規程・書式をいつでもご活用していただくことができます。

医療機関・福祉施設専用の規則、規程、書式の一例

1.医療機関・福祉施設専用の就業規則関係

・リスク対応型医療機関用就業規則

・一体型小規模向けクリニック就業規則

・パートタイマー就業規則

・賃金規程

・退職金規程

・育児介護休業規程

・慶長見舞金規程

・出張旅費規程

・研修規程

・車両管理規程

・マイカー通勤管理規程

・情報管理規程

・院内保育所管理規程

・修学資金貸付規程

・独身寮管理規程

・個人情報管理規程

・昇格取扱規程

・管理職登用規程

 

2.医師職に関する規程

・医師職年棒規程

・医師職学会参加規程

 

3.福祉施設特有の規程

・利用者預かり金管理規程

・経理規程

・公印規程

・公益通報者保護規程

 

4.雇用契約書

・雇用契約書(正職員)

・雇用契約書(パートタイマー)

・雇用契約書(嘱託職員)

・雇用契約書(常勤医師職)

・雇用契約書(試用期間専用)

・雇用契約書(ドライバー職)

・雇用契約書(管理職用)

・有期契約不更新理由書

 

5.採用・入退職関係

・就業に関する誓約書

・退職願兼誓約書

・入職承諾書

・不採用連絡通知

・退職願

・退職証明書

・不採用連絡(書類選考)

・面接調書

・解雇予告通知書

・内定通知書

・銀行口座振込依頼書

・身元保証書

・変更申請書

・入職にあたっての書類一覧

 

6.出張・研修参加関係

・外部研修受講申請書

・外部研修受講報告書

・出張報告書

・出張旅費精算書

 

7.制服管理関係

・制服受領書兼誓約書

・被服管理台帳

 

8.安全衛生関係

・感染症罹患に関する報告書(初回)

・感染症罹患に関する報告書(継続・終了)

 

9.休職関係

・休職辞令

・治療状況に関する意見書

・復職決定通知書

・復職復帰リハビリに関する申出書

 

10.その他

・備品破損、紛失届

・改善提案書

・公印使用許可申請書

・在職証明書

・業務チェックリスト

・自己研鑽シート

・昇格推薦書

・災害時緊急連絡票

・賃金決定における前歴確認シート

・ドライバー職員健康診断書(眼科用)

・金銭消費貸借契約書(就学費用補助関連)

・キャリア面接シート

 大平社会保険労務士事務所では、福岡県内、山口県内の多くの医療機関のお客様のお手伝いをしています。その経験を通して医療機関における現状や抱えている問題などを中心に記載しています。

【医療機関の数・経営状態】

 現在、全国に病院は約8,800施設、一般診療所(クリニックを含む)は約100,000施設あります。

 2008年度の全国公私病院連盟の報告書で「黒字の病院は約24%、赤字の病院は約76%」という数字が出ており、かなり厳しい経営状態です。特に病院全体の4割を占める100床未満の病院は特に経営が厳しいといわれています。

【資格者集団】

 医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、栄養士、臨床工学技師などの国家資格者、医療事務や総務などの一般事務、施設整備者などが働いていますが、圧倒的に資格を保有する者が多く、資格者集団といえます。

 職員のうち概ね半数程度が看護師であり、その他の職種でも女性が活躍していますので、職場に占める女性の割合が多いのも特徴です。

 また、これら有資格者はその資格を活かして働ける場がたくさんありますので、転職をする人が多く、離職率が高い傾向にあります。

【専門性】

 専門の資格を有し、さらに医療という人命を扱っていますので、どの職種の方も職業意識が高い方が多いです。また、一般的な知識を備え、常識的な判断をする人が多い傾向にあります。

 職員も昔と違い、「医療機関はサービス業」という認識で働く人が増え、昨今の診療報酬の引き下げ等で収益が厳しい状況にありますので、経営的な視点をもって自ら業務のあり方、接遇やサービス提供の仕方などを真剣に検討し取り組んでいます。

 しかしながら、労務の面から医療機関を見た場合は、職員に対し適切な取り扱いができていない医療機関や、バランスの取れた管理に欠ける医療機関が多いように思います。

【看護師不足】

看護師の確保は、医療機関最大の課題といっても過言ではありません。看護師の新卒者の多くは、比較的大きな規模の病院に最初は就職し、その後3年前後で離職、結婚・出産を理由に家庭に入り、または転職する方が多いです。診療所や小規模の病院は新卒者を採用できることが少ないため、転職者や子育てがひと段落した看護師を中途採用するもが一般的です。看護師の資格を持ちながらも働いていない方を「潜在看護師」といい、かなりの数いますが、働く環境が整っていないという理由などで医療の現場では足りておらず、看護師の確保は医療機関にとって極めて深刻な問題です。最近は人材紹介会社を経由しての採用が多少増えてきているようですが、まだまだ十分な状況とはいえません。

 その他、薬剤師や作業療法士などの職種についても看護師と同様に不足している状況です。

【超多忙である】

診療報酬制度において報酬点数を得るために求められる報酬算定条件がかなり増えてきているようです。患者への十分な説明が求められたり、文書の作成・交付義務などで以前に比べ相当な業務量になっています。さらに、最近増えている医療訴訟を回避するためにいろいろな対策を講じ、また、非常に神経を使うため、かなりの時間と労力を取られています。そのため、医師に限らず、看護師や事務職も非常に多忙な状態です。

看護師など職員が十分に足りていない状態が多忙に拍車をかけ、超多忙になっています。

【コミュニケーションの不足】

 医療機関においてコミュニケーションは非常に大切ですが、実際のところ十分にできていない医療機関が多いように思います。専門職の集団であるがゆえに、他部門に対する遠慮や、自分とは無関係という考え方、他の職員との競争意識など、コミュニケーション上の問題により業務がスムーズに進まないケースが見受けられます。

 クリニックなど少人数の職場でも、職員間の調整が苦手で職員と距離をおいてしまう院長先生もいらっしゃいます。

 労務についての問題は、医療機関それぞれです。法改正や労働トラブルの傾向を理解し、速やかな対応を図っている医療機関がある一方、中にはサービス残業が多く、労務問題を内包している医療機関も見られます。

 医療機関における労務面の代表的な問題は、次のものがあります。

【長時間労働・不適切な労働時間管理】

 医療機関は、以前は長時間労働が当たり前の業界でした。当直明けでもそのまま日勤に入り、医師や事務職員を中心に時間外労働が月に100時間を超えることが普通で、まだその体質が残っているように思います。また、関連して労働時間の把握が適切に行われていない実態があります。

【就業規則等の規程類の未整備】

 医療機関の多くは、労働各法の改正にその都度対応できていないようです。かなり前に作った就業規則をずっと使っていたり、他の医療機関の物を使い、実態と全く合っていないなど、リスク管理ができていないところが多いです。

 また、就業規則を作ると、年休や育児休業など労働者の権利を主張され、勤務体制が崩れて診療に差し支えることから、作成に難色を示される場合もあります。しかし、職場で伏せていてもネット社会の現代においては、情報は容易に入手できるため、このような対応はかえってマイナスになることが多いです。

【メンタルヘルス不全】

 他の企業同様、うつ病などメンタル面に問題を抱える職員が増えてきています。メンタルヘルスへの対応は大きな課題といえるでしょう。医療機関はうつ病への対処方法は当然一般企業より理解されていますが、勤務のさせ方や休職、雇い止めなどの対応についてどうしたら良いかというご相談を良く受けています。

医療機関ならではの労務問題は、取り組み次第で十分改善できます。特に、労働時間の問題と、求人の問題については、次のような取り組みが効果的です。

【労働時間の問題を解決】

 医療機関には常勤以外に、パートなどの非正規職員もたくさんおり、その勤務時間の集計や給与計算はかなり大変です。患者の多い日は診療時間が延長しますので、時間外労働やパートの勤務時間はかなり変動があり、その集計は大変な作業量になります。

 直接業務以外に多くの時間を割くことになりますので、給与計算は社労士に外注しましょう。社労士に外注することで、勤怠集計や給与計算のやり方が法律上間違っていることも多くあり、正しくする機会になりますし、院内で給与情報が漏えいする危険性もなくなります。あわせて、社労士に労働時間の実態を把握させ、労働時間の効率的な削減方法を提案させましょう。

【求人の問題を解決】

 看護師の確保は医療機関にとって最大の課題です。その他の職種も含めて求職者は医療機関のホームページを必ず確認しますが、求人欄に魅力のある情報が載っているところは多くありません。処遇などの基本情報はもちろんのこと、その他に子育て支援などの働きやすい職場作りへの取り組みや、教育研修の実績などを併せて掲載する工夫が必要です。そのためには、掲載する内容に適した環境整備をしなければなりませんので、社労士にご相談ください。

 例えば、働きやすい職場作りとしては、正職員短時間勤務制度を設けるなど柔軟性のある仕組みが考えられます。一方で、職員への有給休暇取得促進を配慮するなど、バランスの取れた制度づくりが求められます。

 看護師などの求職者は、これらアピール情報にメリットを感じ、働く制度が整っているために就職を決意するものです。

 社労士は、労務管理の相談や職員の指導の仕方、コミュニケーションの取り方、就業規則等の規程類の整備など改善しなければならない様々な労務問題に対応できますので、ぜひご相談ください。

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